この記事では北欧神話における最初の戦争を紹介していく。特に以下の2つを知りたい人におすすめ。
- アース神とヴァン神による最初の戦争
- ミーミルが首だけになった理由
全体の流れとしては、アースガルズにグルヴェイグという魔女が訪れるのだけど、歓迎されず処刑されてしまう。
それを知ったヴァン神族が軍を率いて攻めてくる。それに対しオーディンはヤリを投げつけ最初の戦争を起こす。両者は和平を結ぶために人質を差し出すのだが・・・。
この記事をよむことで、神々が起こした戦争のきっかけから戦後までの流れをつかめるので、ぜひ見ていってほしい。
この記事のもくじ (クリックでジャンプ)
アースガルズに来た戦争の火種グルヴェイグ
黄金時代を築いたアース神族のもとにグルヴェイグという魔女が訪れる。不幸をもたらした魔女を神々は処刑するが、魔女は何度も蘇る。
三度焼き殺され、三度生き返ったグルヴェイグ
神々が槍でグルヴェイグを突き、
ハールの館で焼いたことが、
この世での戦の始まりであることを
わたしは知っている。三たび
焼いたが、三たび生れかえり、
何度もくり返したが、
まだ女は生きている。
エッダ: 古代北欧歌謡集 巫女の予言
万物の父オーディンはアース神族の拠点「アースガルズ」をつくった。あらゆるものが金で作られ、神々は、なに不自由することのない「黄金時代」を向かえていた。
そこへ1人の女が訪ねてきた。その女はヴァン神族のグルヴェイグと名のった。
すると彼女は魔法を使い、あらゆる者の心を迷わせた。 彼女の魔法にかかったものは、黄金や悪しき願望への欲にかられた。
その様子を見たアース神は、彼女を捕らえヤリで突きさして処刑した。
そのあとグラズヘイムにある火の中へとグルヴェイグを投げこみ、焼き殺した。
しかし、驚くことに彼女は傷も受けず、炎の外へ歩み出てきた。三度グルヴェイグを焼いたが、三度とも彼女は生き返った。
不気味なヘイズ
どこへ行っても女は
ヘイズと呼ばれた。女は魔法を
使ったからだ。どこでも女は魔法を
使い、人の心を魔法でたぶしかし、
みだらな娘たちの喜びだった。
エッダ: 古代北欧歌謡集 巫女の予言
それからグルヴェイグは屋敷の中を駆け回り、ついには他の世界へと渡った。
グルヴェイグは黄金に執着し、どこへ行っても魔法で人々の心に悪を植え付けた。
そしてグルヴェイグは、悪い女たちの喜びのもとになった。この一件から彼女は別名ヘイズ〈輝く者〉と呼ばれるようになった。
アース神族とヴァン神族の衝突:世界初の戦争
グルヴェイグが受けた仕打ちを知ったヴァン神族は、復讐のため戦争の準備をはじめる。
それを知ったオーディンは、敵の軍勢の中にヤリを投げつける。
これを気にアース神族とヴァン神族による世界初の戦争が勃発する。
オーディンは槍を放って、敵の軍勢の中に投げつけ、これがこの世で
最初の戦となった。アース神の城壁は破られ、戦を告げるヴァンル神たちは戦場を踏み荒すことができた。
エッダ: 古代北欧歌謡集 巫女の予言
戦争を仕掛けたオーディン
ヴァン神族は、アース神族がグルヴェイグをどのように迎えたかを知った。
彼らはアース神族への復讐を誓い、戦争の準備をはじめた。魔法を使うもの、ヤリの扱いに優れたものが集まった。
ヴァン神族はニョルズを筆頭に、多くの軍勢がアースガルズへと歩をすすめた。
一方アースガルズではオーディンが全世界を見渡せる、フリズスキャルフに座ってそのようすを見ていた。
オーディンは神々を招集しヴァン神族を迎え撃つためヤリを研ぎ、戦争に備えた。
こうして神々は互いに戦場で向かいあった。すると先頭に立ったオーディンは、ヤリを片手にとり敵の軍勢のなかへ勢いよく放り投げた。
こうして戦いの火ぶたが切られた。この世で最初の戦争がはじまった。
終わりのない戦い
はじめはヴァン神族が戦場を占領した。
彼らは魔法を使って、アースガルドの高くそびえる城砦を破壊した。
アース神族はヴァン神族のような魔法は使えないため大打撃を受けた。
しかしアース神族は戦いの神。
ヴァン神族の攻撃に一時は苦戦したものの、
それをくいとめ軍勢をすすめ前方へ殺到した。そしてヴァナヘイムに自分たちと同じ損害を与えた。
オーディンとニョルズの和解
この戦争に決着がつかないと見た両神族。
指導者の協議により、たがいに人質を差しだすことで和平を結ぶ。
そこで、裁き治める神、いと尊い
神々は、こぞって裁きの庭に出で、
協議をこらした。アース神が貢物を
差し出した方がよいか、それとも、神々がひとしく生贄を
うけるべきか、と。
エッダ: 古代北欧歌謡集 巫女の予言
長いあいだ両神族は戦いに明け暮れ、あたりは荒れはてていた。
このままでは戦争の決着がつかないと、いよいよはっきりしてきた。
そこでアース神族はグラズヘイムにつどい、この戦争の原因について協議した。
すると「この戦争を治めるには敵国へ人質を差しだすべきだ」との声や、
「戦争の発端はグルヴェイグにあり、相手も同様に差しだすべきだ」との声もあがった。
そして両神族の長である、オーディンとニョズルは武器を置き、和平を結ぶために会合した。
戦いの原因について、アース神だけに否があり人質を差しだすべきか、それとも双方が差しだすべきか議論した。
そして結論は、たがいに人質を差しだすことにより帰結する運びとなった。
唾液から生まれたクヴァシル
神々は和平の印として壺につばを吐いた。
つばが消えないように、技巧をこらしてつばに人の形を与えた。
こうして賢者クヴァシルが生まれた。クヴァシルは賢く、彼に問いかけて答えられない質問はなかった。
アース・ヴァン神族の交換
ヴァン神族からはニョルズ・フレイ・フレイヤが人質として出されるが、それに加えクヴァシルも同行する。
アース神族の人質はヘーニルとミーミルが派遣される。
ヴァン神族の人質
ヴァン神族は指導者にふさわしいニョルズとその息子フレイを派遣した。
のちに娘のフレイヤとクヴァシルも志願し、4人がアースガルズへ旅立った。
アースガルズでは、近親婚が禁止されていた。しかしフレイとフレイヤはニョルズが実の妹とのあいだに設けた子ども。
それを知ったアース神は不徳と感じながらも3人を受けれいた。
アース神族の人質
アース神族はニョルズとクヴァシルの対になるように、ヘーニルとミーミルをヴァナヘイムに派遣した。
ヘーニルは体格がよく、容姿も美しいため指導者として適任とされた。ミーミルはその理解力と知恵においてクヴァシルと似ていた。
ヴァン神族の怒り:首をはねられたミーミル
アース神族に送られた4人はそれぞれの役割を与えられた。
一方、ヘーニルはヴァン神族の王として不適任とみなされてしまい、見せしめにミーミルの首をはね、オーディンのもとへ送り返す。
アース神族として生きる
アース神は、ニョルズとフレイを供犠をつかさどる司祭に任命した。
フレイヤは魔術に秀でていたため、ヴァナヘイムで使われている魔法をアース神族に教えた。
クヴァシルはしばらくしたあと、人間たちに知識を広くさずけるため旅にでかけた。
ヴァン神族の怒り
ヘーニルはヴァン神族の王に迎えられ、ミーミルはヘーニルの相談役となった。
洞察力のあるミーミルはヘーニルに助言をおこない、期待を裏切らなかった。もっとも、彼らが行動を共にしているときは。
ミーミルが不在の民会や集会が行われることがあった。そのとき、意見を求められたヘーニルは決まって「ほかの神に決めてもらうように」といった。
このような出来事がつづき、ヴァン神族のあいだで不安の声があがった。
「アース神が自分たちをだましたのではないか」
「一族の戦力を低下させることが狙いなのでは」と。
まもなくその疑いは怒りへと移り、そして復讐の考えにかわった。
彼らはミーミルを捕らえると地面に投げたおし、無惨にもその首を切りおとした。
そして見せしめに、彼を派遣してきたオーディンのもとに、ミーミルの首を送りかえした。
知恵を得たオーディン
届けられたミーミルの首を見ると、オーディンはすぐさま手に取って、決して腐ることのないよう、保存のきく薬草をぬりつけた。
そしてまじないを唱えて、ミーミルに話す力を与えた。この日からミーミルの知恵は、オーディンの知恵となり、他のだれにも知られていない多くを知った。
結果的にアース神族の勝ち
この記事では北欧神話における神々の戦争を紹介した。
この戦争は和平を結んだものの、アース神族の勝利と筆者は思う。
理由は無能なヘーニルを与えることにより、指導者のニョルズを手に入れ、ヴァン神族の戦力は落ちまくった。
そしてなぜかヘーニルではなく、ミーミルを送り返してきた。(首だけ)
ミーミルが返ってきたおかげで人質は、実質1人しか派遣しておらず、後々オーディンに知恵を与えることになる。
加えてフレイヤはヴァン神族の魔法をアース神族に広めた。これによりアース神たちも魔法を使えるようになってしまった。
引用画像
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https://mythologysource.com/aesir-vanir-war/
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%B7%E3%83%AB
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